
- 佐野 正幸
- 草思社
あの頃,こんな球場があったのか。
この本は,プロ野球の繁栄の陰で消えていった球場の歴史にスポットライトを当てている。 最近はどこの球場も綺麗になり,いろんな面で楽しめる施設に変わりつつあるが,その一方で失われていった空間もあることを著者は伝える。その事実に,古くからのファンは何とも言えない寂しさを感じるし,新しいファンは,有り得ないという感想を持つかもしれない。 この本のように,ややもすると完全に忘れ去られてしまいそうな歴史を掘り起こす本は,ファンにとっては有難い。私にとっても懐かしい球場があれば,名前は知っていたが歴史などについて初めて知る球場もあった。一部の球場は,著者の古いエピソードもあわせて綴られており,今は無い球場への読者の思慕を増幅させる。 プロ野球観戦には,球場を観て,感じて,楽しむというメニューもある。そんなことを思わせてくれる一冊である。
球場とは、なんと魅力的な建造物なのか
近鉄球団の消滅は野球好きにとっては本当に忌まわしい出来事だったけど、あの一連の騒動をきっかけに、やっと巷の野球好きが、自分たちの言葉で野球を語り始めたんじゃないだろうか。野球好きが100人いれば100通りの“野球”ってもんが存在するんだってことを、この本を読んであらためて思った。 札幌生まれなのになぜか阪急ファン、西本監督に薫陶し、のち近鉄ファン(しかも西本監督との縁で近鉄百貨店に就職!)って著者の来歴だけで「おぉーっ!」って感じだけど、“熱狂的な野球ファン”ってポーズを見せないところに好感が持てる。きっと本当に“好き”って思いは、人に見せつけて成り立つもんじゃないのだ。 「球場とは、なんと魅力的な建造物なのか」。もうこの言葉がすべて。テレビ、ラジオ、スポーツ紙...様々な“野球”が存在するけど、やっぱ「球場」はいいよね。僕の場合、小学生の頃、横浜平和球場内の剣道場に通い、中学生の頃、その跡地に横浜スタジアムが出来てホエールズのファンになった。あれから30年、何度も足を運んでるけど、いつだって球場には「ときめき」と「くつろぎ」の両方がある。「西鉄」って球団名や後楽園球場の「パイオニア」の看板といった企業名が思い出の呼称になりうる、って著者の言葉もよくわかる。看板とかお店とか、球場には特有の風景や匂いがあって、ゲームとは別に思い出につながっているから。「あの頃が懐かしいが、やはり今のほうがいい」という、ノスタルジーだけで球場を捉えていない著者の視点にも共感を持てる。 ところで、「Aクラスになったら翌シーズンの本拠地開幕」ってルールはいつの間にうやむやになったのだろう。本著でも理不尽なビジター開催が不幸を招いたケースが取り上げられているけど、球場の持つパワーってすごいわけでさぁ。チームがAクラス目指す意味も、消化試合の応援のしがいも薄れるっちゅーの!
球場への思い入れが伝わってくる書
野球創生期の洲崎球場からプロ野球のメッカ・後楽園球場、昨年閉鎖・改装された藤井寺球場、県営宮城球場など合計16球場の生い立ち、エピソードを記した書。 著者が「一般向けに書いた」とあって、野球ファンビギナーやそれ以外の人にも十分楽しめる内容となっている。逆に言えば、知識がある人には少し物足りないかもしれない。 しかしながら、特筆すべきは著者の球場に関する思い入れであろう。著者は今は亡き、阪急・近鉄球団の応援団長として、全国各地の球場で応援活動を行っており、著者でしか分からない情報や自身が体験したエピソードを記している。それが時には可笑しく、時には感傷的にさせてくれる。 球場で観戦したことのある人は何らかの形で、球場に思い出や思い入れがあると思う。それを本書は、代弁してくれているような気がする。 当時や現在のスチール写真もまずまずの数が挿入されているので、楽しめると思う。本書を読んで、是非球場で観戦したあの日を思い浮かべてみてはどうだろうか。
- 昭和プロ野球を彩った「球場」物語 (宝島SUGOI文庫)
- 佐野 正幸 / 宝島社
- 南海ホークスがあったころ---野球ファンとパ・リーグの文化史 (河出文庫 な 26-1)
- 永井 良和 / 橋爪 紳也 / 河出書房新社
- パ・リーグどん底時代―激動の昭和48年
- 佐野 正幸 / 長崎出版
- プロ野球ユニフォ-ム物語
- 綱島 理友 / 綿谷 寛 / ベースボール・マガジン社
- はじまりは大阪にあり (ちくま文庫)
- 井上 理津子 / 筑摩書房
- 大阪まち物語
- なにわ物語研究会 / 創元社
- 近代大阪経済史 (大阪大学新世紀レクチャー)
- 阿部 武司 / 大阪大学出版会
- 大阪市の歴史
- 大阪市史編纂所 / 創元社
- にっぽんの旅 堺
- 昭文社
- 大大阪モダン建築
- 橋爪紳也 / 青幻舎